五日市練成会 R4.7.24

 埼玉越生山からのお誘いで、五日市高校体育館で個人戦での練成会が行われました。ちょうどこの週の28日・29日に日本武道館で全国大会に出場するので、腕を磨くには絶好の練成会となりました。

 また、前回の寄居練成会では、まさに全員ボコボコにされて、選手の闘志に火がついていたところでもあり、個人戦形式の大会を経験することは、参加価値が高いと考えます。

 さて、個人トーナメント方式ですので、負けたら終わりの一発勝負、特に要成館は勝負剣道が上手ではなく、他の道場から受けるインスピレーションを大切に、この機会を自分の経験値となるように試合に臨みます。

 この練成会で一番目について選手は、H・A君です。前後に早いフットワークを使い、スピード感ある打突を繰り出します。直線的な鋭い剣道スタイルは強豪チームの選手に対しても見栄えよく、順調に勝ち上がります。懐に入っての面や抜き面といったスピーディーな展開は見ていて心地よく、時折見せる飛び込み小手や抜き胴も効果的に機能し、今回敢闘賞をいただいて、本人の自信になったと思います。入会当初は剣道に気持ちが入っていないような印象でしたが、持ち前の運動神経と勝つことによる上達の視覚化によって、最近みるみる実力をつけています。普段の稽古も積極的で、このまま順調に稽古をしていけば、いずれは要成館のエースとなるのではと期待される試合内容でした。

 H・Hさんは彼の妹で、普段の稽古も淡々とこなしている印象の選手です。中心から外れてしまう小手打ちに課題があり、小手に面を被られて負けてしまう課題をどのように克服するのか、現在も悩みながら稽古をしています。しかし、出鼻の面や返し胴、引き技と技は多彩で、表情に出るタイプではありませんが、最近は何を考えているのかが読み取れるようになり、実は結構剣道を自分なりに楽しんでいるように感じています。試合においても、大きく崩れることもなく、勝っても負けても自分らしい剣道を展開する選手です。あとは、120点の得意技があれば、試合に勝ち続けることが計算できる選手となると思います。飛び込み面に磨きがかかってきていますので、速い面を試合で使えるようになると良いでしょう。普段の稽古ではなかなか良い面を打っていますので、実践で使えるように稽古してみてください。一の位からの打突をするときっと出小手も打てるでしょう。

 N君は課題が山積みの状態です。それまでのテクニックが相手の成長によって通用しなくなり、体も小さく、スピードもバネもぬけたものではないことから、新しい勝負のイメージがいまだつかめていない状況です。現在の状態は、マイナーチェンジをしている状態ですから、この苦しさを一つずつ克服し、自分の勝つスタイルを確立しましょう。先生方がいろいろアドバイスします、整理して自分の剣風を作り上げてください。自分より体が大きい相手に対し、どのようにして懐に入るかがカギとなります。自分の打ち間に入る前に体の大きい相手が出鼻を打ってきてしまいます。そのため、自分の間合いになっていないのに不十分な距離から打って出てしまい、届かない打ちが目立ちます。間合いには、「距離」と「タイミング」といった2つの要素があります。これを理解して打突することを考えてください。自分が入って打つ間合いも、相手が近づいて打つ間合いも同じ距離です。振りかぶるタイミングに課題があるのではないでしょうか。タメ、誘い、崩し抜き等、形に現れないところに、この課題の難しさがあります。身体のないものは「相手を使う」ことを考えなければならないでしょう。頑張ってください。

 Iさんは出鼻面に特化した剣道をする選手です。それだけでなく、面を見せての小手や抜き胴等、勝てる技を持っている選手です。一方で、気持ちを強く前に出すことや、普段の稽古でも声が出なかったり、見ていないところでは切り返しを歩み足で行ったり、抜けるときに歩いたり、よく言えば抜き方がわかっている、悪く言えば手を抜くといった選手です。今回も自分の弱い心が出てしまい、鋭い出足の面が影を潜めて、良いところが出せずにいました。おそらくセンスは要成館でもピカイチな選手ですが、努力に裏打ちされた自信が足りないのではないかと思います。彼女と同じように才能があり素晴らしい選手を何人も見てきましたが、そのほとんどが才能で剣道をしてしまい、ほどほどの結果しか出せない、成長が止まってしまう選手を多く見てきました。
 剣道をするのは自分であり、結果を求めるのも自分です。求めるのであれば努力をすること、自分から求めることが重要です。自分がどのレベルでやりたいのか、自分自身に問いかけてほしい内容でした。

 T君は、この間防具をつけたばかりの選手です。身体も大きく体幹も強く、基礎をしっかり身に付けているので、寄居練成会から試合を経験して、無我夢中の中からも一本を取る剣道ができるようになってきました。特に出鼻面は中心にのびやかに打突でき、あとちょっと出鼻を取るタイミングに工夫があると中心で竹刀同士がぶつかることがなくなると思います。「先を取る」ということがどのようなことなのかを考えて稽古してみてください。ヒントは出小手を打つタイミングで打てるかということです。今は稽古した分だけ上手になります。 
 このまま楽しんで稽古してください。もう一つ課題は、戻り足ですので踏み込みもいろいろ試してみてください。

 K・R君は抜き技が得意な選手です。間合いの取り方が絶妙で、相手の空振りに技を差し込み、自分の勝ち方を持っている選手です。一方で、簡単に勝てる剣道を覚えてしまい、自分から仕掛けて打突することができなくなっています。もともと、鋭い出鼻面を武器に組み立てていたところ、間合いで抜くことによって効果的に抜き技が決まっていたところ、最近の試合では抜きのみで消極的な印象でした。飛び込み小手も良いタイミングで打突できるのに、相手に圧力をかけないで距離を取ろうとするので、手元に入られて抜ききれない形が目立ちます。抜かれるのを警戒して深く懐に入ってくる相手に、出鼻面や飛び込み小手で出足を止めて距離をとり、自分の有利な間合いで試合を展開できればと思います。

 T・H君は、打突に強さもあり、助走してしまう癖はあるものの基本打ちでは一番目立つバランスで打突しています。気合も残心も良い剣道なのに、結果が出ないことが悩みの種です。特に試合前には集中しすぎて緊張感が高まり、必要以上に硬くなっているように思います。まずは自分の間合いをとってリズムを取って、不用意に間合いに入らないようにして、打突のタイミングをコントロールできるようにしましょう。間合いが落ち着けば、打てるタイミングが見えてくるはずです。

 S君は何といっても手の内が課題です。実は当て感は良いものを持っており、試合においても当たり負けせず、打突のタイミングも悪くなく、「これで手の内を使った技が打てればなぁ」という印象がいつもあることが課題です。おそらく、自分が思っている以上に、自分に才能があることに気づいておらず。また、周りも何となく「まぁこんなもんか。」といった雰囲気があり、指導者からしたら、もったいないなといつも思ってしまいます。今回、練成会に参加してくれて、意外に自分ができるということに気が付いたと思います。その一方で、他の道場生ができている手の内が効いた速い技が打てないことも気が付いたと思います。 
 相手はどんどん技術力が上がり、自分は取り残されていくことは薄々気づいていると思いますので、このままだとチームの代表を下級生に奪われるだけでなく、試合も勝てないことが分かっている状況です。自分の限界点がわかって試合にのぞむと、自分自身のワクワクがなくなってしまい、挑戦する意識が薄れてしまいます。勝負にまぐれはありませんので、やった分だけしか試合では出せません。このまま結果が出ないことがわかっていながら次の試合に出るのか、それとも課題を受け止めて、次のステップに進むのか、今回の練成会を通じて大きな選択を迫られることとなったのではないでしょうか。


 T・Kさんは思った結果が出なく、最近モヤモヤが止まらない印象です。面の打突にちょっと癖があり打突が軽く見えてしまうことが難点です。気合もやる気もあり、普段の稽古も一生懸命取り組んでいます。指導者としても勝たせたい選手です。改善点は少し相手を見てしまい、打突のタイミングが遅れて相打ちになってしまうことです。せっかく自分で間合いを作っているのですから、もっと積極的に打って出ても良いのではないでしょうか。また、面技が主体となっていますが、もっと小手を狙って構成してみても良いと思います。相手が小手を警戒して面がおろそかになれば、結果として自分が決めたい飛び込み面が決まるようになります。ちょっと目先を変えてみるのも良いかもしれません。あと、竹刀をもっと振ってよいと思います。

 K・R君は3年生のクラスの大将を任せる本格派の剣道です。負けて悔し涙を流す繊細な心を持ち、勝てばうれしそうにしている剣道大好きな印象を持っています。学年別錬成大会では、代表戦の負けを経験し、勝負の怖さや難しさ、何より大将としての責任感を痛感したことでしょう。
 基本的には、大きく修正する課題もなく、今の状態をさらに磨き上げる地道な稽古をする時期となっています。それまでの課題を克服する満足感や新しい技に取り組むチャレンジ感はないので、本人的には刺激が足りないのかもしれません。より速く・より強くといった単純に個人の基礎をスキルアップすることが重要になっています。コツコツと力を蓄え、根を広げ、地力の強い剣道を目指してほしいです。この基礎を磨いた選手が、結局は崩れない最強の剣道を身につけるのです。


 今回、寄居練成会から始まり、学年別個人練成大会、そして、五日市練成会と実践的な稽古や試合が続きました。試合1回稽古10回分です。自分の課題が浮き彫りとなり、今後の稽古に役立つ良い経験ができたと思います。この先は「求めて稽古する者」かそうでないのかが問われます。稽古していても本番で実力が発揮できない選手が多くいます。一方で、実力以上の力を発揮し栄光をつかむ者も多くいます。
 自分はどっちになるのかは「運」では決まりません。日々の稽古でしか力は蓄えられません。自分の力でつかみ取ってください。


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