52回東京都個人少年剣道大会 R5.7.17 

 各道場から部門別3名の選手を選出し、小学生男子、小学生女子、中学生男子、中学生女子と4部門12名をエントリーしました。
 前日まで2日間の合宿を山梨で行い、その流れで大会に臨みました。

 大会は小学生の部から始まり、期待のN君が先陣を切ります。相手は名門東松館の選手です。立ち上がりからレベルの高い激しい技の応酬が続きます。試合も中盤になり相手の小手に対してN君の出鼻面が交錯しました。旗3本面に上がりまずは先制し、有利に試合を進めます。残り時間も少なくなり、相手の選手が必至の反撃、ややN君も慎重な試合運びで相手の技を防御し返し技を使って時間をつぶしています。しかし、守りに入り手元が浮いたその隙は、強豪選手は見逃しません。残り時間もわずかのところで浮いた手元に小手を決められて試合は延長戦となりました。お互いにレベルが拮抗し、手に汗握る技の応酬が続きます。しかし残念ながら一本を取られてしまい、金星を取り損ねてしまいました。

 防御の際は、手元を挙げて迎えるのではなく、剣先を利かせて相手の竹刀を打ち落とし、鍔元を押さえ、体をさばいて防御しなければなりません。残り15秒での同店から、延長での逆転負けに悔しさがにじみました。

 相手の選手が、5回戦くらい勝ち上がっているのを目の当たりにし、自分もそのレベルで勝負ができる照明はできました。あとは勝ち切るための技術と戦略が必要です。負けてしまったものの、多くを学んだ一戦でした。普段の努力が結果として現れた良い内容の試合でした。

 T君は体も小さく力も飛びぬけて強くなく、スピード感も特別速くない剣道です。しかし、稽古では誰よりも一生懸命で自主練を怠らない選手です。一方で、スピードや体格差に押し切られて最近では結果が出ずにAチームから降格することもしばしば見られて、今回久しぶりの代表獲得です。

 一回戦は相変わらずの悪い内容で、技の選択やフットワークも悪く、打突の機会も単調でしたが何とか勝ち上がりました。二回戦は一回戦の反省を修正し、見違えるような試合展開となりました。面を見せてからの小手や速い一拍子の面など良い機会に打突をし、完全に試合を支配しました。

 三回戦は昭島中央の選手との闘いです。実力的には全くかなわないと思われるところ、本人がどのような試合を見せてくれるか注目しました。

 自分から攻めていったところに相手も乗り返し、手元が上がったところに小手を打たれてしまいました。その後も格の違いを見せつけられての敗戦でした。

 最近剣道の結果がついてこず、いやになってもしょうがない状況でも、腐らず、自分の剣道の方向性を探っている姿は素晴らしいと思います。努力したからと言って必ず結果が現れるものではありませんが、努力をしない者には結果は絶対に現れません。今回の三回戦進出は、普段の努力が現れた結果と思います。後は自分の勝ちパターンを作るだけです。今日の勝ちを参考に稽古してください。

 H君は5年生ながら6年生を倒して代表権を勝ち取った選手です。さすがは代表に入った選手です。一回戦から得意のスピードを生かした試合運びで、次々に一本を決めていきます。

 相手の防御に担ぎ気味に小手を打ち、有効打が次々にあたります。三回戦では強い相手との試合となりました。しかし、試合内容は五分五分で、どちらに勝利が転がるかわからない展開でしたが残念な一本負けでした。スピードではやや有利にありましたが、テクニックは相手選手の方が良い感じでした。勝ち負けは、ちょっとした差で決まりますが、そのちょっとが大きいのです。

 しかし、今日の試合展開と内容に、次期エースが誰なのかを知らしめるには十分な内容であったと思います。

 小学生女子の部は、Hさんから始まります。相手は報徳会の選手で、スピードもあり、厳しい戦いになります。しかし相性がいいのか、立ち上がりから惜しい技が当たります。ややあって、相手の小手に対してかぶせた面が当たり先制の一本となりました。その後もお互い惜しい技がでるものの、このまま一本勝ちとなるかと思っていたところ、残り15秒くらいで取り返され延長戦に突入し、押している内容でも手の内の甘さと残心のとれないことが、なかなか一本につながりません最後は相打ちの面で負けてしまいました。剣道の内容で圧倒しているだけに残念な結果となってしまいました。一本取れるチャンスが何回もありましたが、相手が避けたのではなく、自分のミスショットでした。普段の稽古で確率を上げるような正確性を取り入れてください。相手が上位に食い込んでいることを考えれば、金星を逃したと言える一戦でした。

 Iさんは、今剣道を作り替えている最中で、それでも速い瞬発系の剣道が魅力の選手です。ただ最近は返し技を狙うあまりに積極的な攻めが見れなくなっています。

 抜き技も上手で、最近は守り型の剣道で勝っているだけに、なかなか積極的な以前の剣道に戻りません。自分のスピードを生かした打突から相手が無理に出てきたときに抜きや返しといった展開になると良いと思います。前に出る出鼻技を検討してください。

 Tさんは少し剣道が崩れてきています。工夫をしているのは見ればわかるのですが、正しい方向性ではないようです。当てることに意識が向きすぎているので、横から狙ったり、竹刀を立てて相手を誘ったりして中心の意識が薄くなっています。自分が中心を取っての出鼻面が武器であったのに小手を拾いに行くことが増えています。結果的に自分の良さが消えているような印象です。試合展開をイメージして剣風を考えてみてください。今回の試合ではやはり前に出て自分から打つ技が良かったと思います。相打ちではなく出鼻に技が出せるようにしてみてください。

 中学生男子の部はH君です。中学から剣道をはじめ、本人の努力で中学でもレギュラーを獲得し、厳しい練成会を経て、今回個人戦にエントリーしました。体も大きくなく強い筋肉をもってなく、燃えるような激しい闘志があるわけでもないが、間合いとタイミングのつかみ方にセンスを感じ飄々とした剣風がなんとも面白い味の選手です。

 今回試合にあたって、自分より圧倒的に強い相手に対し、どのように戦うのかが課題の試合となりました。試合が始まってすぐに相打ちの面で一本を取られてしまいました。数本の打ち合いがあり、またも相打ちで二本目を取られてしまいました。

 体格もスピードも不利な状況で相打面の打ち合いをすれば勝ち目はないでしょう。自分の得意の間合いとタイミングで勝負すれば違った試合内容になったと思います。初めての錬成大会で実力を出すことは難しいと思いますが、この負けから見えてきた課題は、今後も必ず直面する課題です。どのように克服していくのか稽古に反映してください。

 K君は出小手、返し胴と外してしまったり、旗が上がらなかったりと不完全燃焼な試合であったようです。やや腰が引けた中断の構えや左手の位置、右手で竹刀を引き上げる竹刀操作や、伸びやかな抜けと残心など、課題は山積みです。すべてがマイナーチェンンジする必要があります。正しい剣道を目指せば、必然的に勝率も上がるはずです。まずは中断と打突の振りのバランスから直してみてください。

 また、小学生の付き人として子供が良い活躍をしたということは、自分がその選手に良いリズムを作ったということです。今回は特に良い雰囲気を作ってくれていました。さすがです。

 I君は中学では補欠の選手です。同学年に5人メンバーが揃っているため、6番目の選手で試合経験も少なく、今回が最初で最後の個人戦出場です。スピードも打突のタイミングも悪くないものの、気合のイ発生や打突の精度が悪く、一本をなかなか取れません。今回は本人なりに一生懸命試合をした結果でしょうか。四回戦まで進出しました。どの試合も彼らしい小手と面が出ていました。最後負けた試合でも、勝て得る要素は十分にありましたが、自分の打突の精度の低さで一本が取れず、相手が強かったというよりは、自分が一本を取り切れなかったといった敗戦でした。

 補欠癖のついた自分の剣道が実はもっとやれたことの証明となった試合内容でした。今後、剣道を続けるのか、どうするのか可能性が見れた内容の試合となったと思います。

 中学女子の部はHさんの戦いに注目します。中学から剣道を始めて2段を取得し、中学でも大将の重責を担い、今日は自分の集大成の試合となります。

 一回戦は自分の悪いところが出てしまいました。足を上にあげ肘を曲げて力が入り、二拍子で打突し、間合いも遠く無駄うちが多かった内容です。辛くも勝利し二回戦に進みます。
 二回戦は課題を修正し、鋭い打突が多くい見られ本来の実力を発揮しての勝利でした。

 いよいよ三回戦相手の選手はさすがに強い試合運びで勝ち上がった選手です。自分より強い相手との戦いです。手足の長さを生かした出鼻に技を打ち、得意の返し胴も出しますが、双方ともに有効打がなく延長戦になります。ややあって、手元を挙げたところに相手の小手が一本、最後は実力を出し切った敗戦に彼女の2年半が素晴らしい修行であったと思える清々しい負けに拍手を送りたいと思います。

 Iさんは初戦から動きも良く打突も切れており今日は期待ができる剣道です。特に今までは面技での勝利が多かったところ、最近は出小手に光るものがあります。結果は二回戦負けではあったものの、内容については悪くなかったように思います。特にスピードは全体を見ても負けておらず、自信を持って良いのではないかと思います。後はそのスピードを生かす技の構成や間合い、タイミングを論理的に考えて、どうすれば自分が有利に試合展開を運べるか考える必要があります。勝つけど負ける剣道ではなく、負けない剣道もそろそろ考えてみてはどうでしょうか。

 Tさんは相変わらず攻めが遅く、試合展開を相手に合わせてしまいます。結果相打ちの技が増えてしまい、負けパターンとなります。自分主導で間合いを作り、打突の機会を増やせば自分の試合展開になると思います。攻めの形をイメージして稽古をしてください。

 2日間の合宿から、続けての錬成大会に選手および保護者の皆さんお疲れさまでした。それぞれの課題が浮き彫りになった良い大会だったと思います。また、どの選手も東京都レベルで活躍できる可能性を感じた大会となったことと思います。

 この課題をそのままにせず、稽古に反映して今後の飛躍に変えてください。

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