第22回東京都少年剣道学年別個人錬成大会R5. 8. 13

 台風が迫る中、夏休中の最後となる、学年別錬成大会が東京武道館で行われました。小学校1年生から中学3年生までの各学年で熱戦が繰り広げられました。

 要成館からは、小学生は各学年にフルエントリーし、各選手とも、全国大会出場を逃した雪辱に燃えています。特に個人戦は負けたら終わりの一発勝負ですので、負けないことと勝ち切ることが求められます。

 1・2年生の部のH君は、最近落ち着いて稽古に参加できるようになってきました。構えやフットワークも良く、一本を期待しましたが、相手が一歩の打突を1拍子で打ってくるのに対して、助走を使ってしまい、上から 被られしまいました。残念な結果ですが、敗因は分かっているので、稽古時に打突をする際、左足を継がない打ちを実践してください。

 同じくKさんは実力通りの剣道でしたが、勝ちにこだわり過ぎるのか、突然打突に硬さが出ます。打ち終わりで抜けなかったり引き技が多くなったり、思い切りの良い出る技が少なくなってきます。1回戦は順当に勝ち上がったものの、2回戦では判定負けと打ち切るということの難しさに直面する試合となりました。負けたくないことが消極的な剣道にならないようにしなければなりません。

 3年生の部は、別会場(サブ3階)の道場で行われ、1名がエントリーしまいした。M君は、最近応用の稽古ができるようになり、試合に生かした技の展開に稽古が移行し、今日の課題は自分の技を出せるかといったところに注目しました。得意の小手は一本当てていますし、旗が上がらなかったことは残念ですが、なぜ旗が上がらないのかを検討してみる必要があります。まずは気合が小さいこと。強い選手は技が当たってなくても気合と残心で一本にもっていきます。当たっているのに一本にならないということは、声と打突にキレがない。残心にキレがないと考えられます。また。根本的な問題ですが、まだ体もできていないため打突に力強さがなく、打突音も小さいことが考えられます。当たらないで負けたのではなく、当たっているのに負けたことが、問題の根の深さです。改善策は、地道な基本練習で冴えを生む打突を繰り返すしかありません。体も学年が上がるにつれてできてきますので、ここを乗り切ってほしいです。きっと次に良い活躍ができると思います。
 
 4年生の組は次期要成館の主力部隊です。戦歴も経験もあり、果たして東京都でどれだけやれるかが問われた試合です。Hさんは、課題の1拍子の面ができるようになりました。負けた試合も、相手が強かったというよりは、自分の打ちそこないであり、その相手が上位に食い込んでいることを考えれば、自分の今の立ち位置が分かると思います。チャンスをー回を逃すと、上に上がれば上がるほど、勝ちが逃げていきます。勝負の厳しさを学んだ敗戦でした。

 K君は、スピードの速い相手に合わせてしまいました。上級生になってくると、ただ打つのではなく、打つ前に何か仕掛けをしてきます。ただ真っ直ぐ間合いを詰めてドンと打って当たっていた低学年と違い、そろそろ自分もマイナーチェンジしなければ、勝ちは続かないことが分かったと思います。がむしゃらで、元気一杯の剣道は好感が持てますが、試合の結果は一つです。自分がここをどのように研究するのかによって、今後の試合結果に直結すると思います。

 今日の一番手柄はベスト16まで上がったTさんです。一時、自分の剣道に迷いが生じてスランプ気味になったものの、自宅での自主練と本人のやる気で、復活した剣道を披露できました。得意の出ばな面がしっかり出て、次々に強豪を撃破し、あと一つ勝てば、敢闘賞のベスト8でした。負けた試合も自分の打突を空振りしてしまいました。ワンチャンスをものにできないと、上位の戦いは勝ちにつながりません。今回逃がした魚は大きい敗戦でしたが、自分が東京都で十分通用する選手であることを証明した1日であったのではないかと思います。
 課題は、負けたビデオを確認するとわかりますが、負けるときは間合いが詰まり、その場打ちが多くなることです。勝ち試合では踏み込み足が前に出て、伸びやかな技が出ているのですが、負け試合では、その場で足をあげて、ドンドンとその場打ちを繰り返しています。上位になれば、相手も間合いを詰めて1拍子で打ってきますので、当然間合いが詰まります。その時にどうするのかが次のステップですね。間合いを詰めてくるときに技を出すのか、つまらないようなフットワークを考えるのか、方法はいろいろあります。

 T君は、錬成大会独り立ちです。まだ体が小さく力も弱いですが、当て感がいい選手なので注目しました。試合は自分らしい攻防が続きましたが、やはり力強さに押し負けている印象です。自分の打突を打ち切って、残心まで決める稽古をもっとしないと、相手に力負けをしてしまう印象を受けました。

 小学校5年生の部は、期待の選手H君です。最近は剣道の奥深さ、難しさもわかってきているようで、剣道がどんどん進化しています。求めて修行する者は、ただ稽古を与えられている者の倍の進化をすることを証明しているようです。

 今大会でも、圧倒的な打突力と身体的な特徴である瞬発力を使って、次々に相手に一本を決めます。ベスト16まで一気に駆け上がり、いよいよ強豪昭島中央の選手と激突しました。試合内容は一進一退。きれいな中段から真っ直ぐの面を出す相手選手と、それを返し面で仕留めようとするH君の攻防に時間があっという間に過ぎていきます。途中何本か捨てて打った飛び込み面も惜しい状況に優勢に試合が進んでいきます。
 延長もあっという間に終了し、勝負は旗判定となりました。手数・有効打・気合と負ける要素はなく、試合終了後は応援の子供たちと勝利を確信していましたが、結果は旗三本昭島。重い空気がただよいます。判定基準が何だったのか疑問が残った判定でした。これが名門のネームバリューなのか、ただし、家に帰り、ビデオを見返すと、相手の剣道の姿の良さ、先にかけて打突している数と必ずしも圧勝ではなかったことが確認できました。
 ここでもベスト8の壁に阻まれてしまいました。しかし、自分が昭島の選手と5分以上にやれることの証明をしたことは、今後の本人の剣道に大きな影響を与えることでしょう。次は白黒きっちりつけて勝ちましょう!

 6年生の部はタレントぞろいです。そして、全国大会を逃した選手たちが、ここでどのような存在感を出すのか、小学生最後の大きな大会でどのような表現ができるのか、問われた試合となりました。

 Nくんはここまで6年生を引っ張ってきた存在の選手です。いつも最後まで居残り稽古をして自分の剣道について研究を怠りません。最近は勝ち運に恵まれず、強豪道場のレギュラーと対戦することが多いものの、一本を争う緊張した良い試合が続いていました。
 今回も一回戦を順調に勝ち上がり、二回戦は強豪「昭島中央」との戦いに臨みます。さすがは相手も隙が無く、お互いに厳しい打突を繰り出すも有効打が出ません。終盤の残り時間わずかのところで一本を取られてしまいました。
 日ごろから、強い相手に当たって、それを乗り越えなければならないことを課題としていましたが、今回も残念な結果になってしまいました。試合内容は、自分らしい出し切ったものでした。悔いのない負けなど存在しないと思います。まだまだ、強くなれます。この結果を自分の燃料として、気持ちをさらに燃え上がらせてください。自分の可能性を信じましょう。

 T君は、防具を付けて1年ちょっとで、合宿や各錬成大会、夏の武道館(JR)を体験し、特に武道館では大将に勝負が回っての二本勝ちと、結果が出始めている選手です。
 今回も得意の出ばな面が炸裂し、自分の剣道ができています。二回戦では強豪の「東松館」の選手と対戦し、幸先よく出鼻面で一本を取ったものの、さすがは強豪選手、すかさず出鼻が得意な選手を見切って出小手を返され苦しい展開となりました。しかし、二本目開始後すぐに裏の面を打ち切り大金星の二本勝ちとなりました。観客席も大いに沸いたー戦に、本人は事の重大性を理解できていないのか、淡々とした様子でー戦を振り返っていました。裏の面は「お父さんの得意技!」と述べ、狙って打ったことが分かり、彼もまた自分で剣道を考えて稽古していた一人であったと、感動しました。ただし、3回戦は、あっという間に二本負け、まだまだ修行が足りません。(笑)

 K君は、ややスランプ気味です。6年生になって、周りが力強い剣道になっているのに、対応ができていない印象を持っています。そもそも、体や力が強いタイプではないので、周りの進化に適応できなくなっていることが問題であると考えます。そこで、力ではなくキレで勝負するための、新たな小手技と面技を手に入れるため、今日帰ってからしつかり稽古ができました。自分がマイナーチェンジした感覚があればシメタものです。自分の剣道の骨組みを作り直して、新しい武器を磨いてくださvヽ。

 S君も最近は勝ちに恵まれません。5年生で通用した出鼻技が磨かれておらず、相打ちとなったり、出遅れたりして一本を与えてしまいます。器用な技を打つタイプではないので、まずは「先」の理解を深める必要があります。その上で、新たな出小手技を磨き、元々打てる返し面等を6年生のレベルに引き上げる必要があります。やっと剣道が楽しくなってきたんですから、やっと周りから自分の剣道が期待されるようになってきたんですから、何よりも、やっと自分が勝ちたいと思ったんですから、この瞬間を逃さないように大切に稽古してください。

 T君は今日は記念すべき日となりました。体が小さく勝ちに恵まれず、自分の剣道の方向性も決まらず、もがき苦しんだ一年でした。しかし、自宅での自主練を欠かさず、家族もそれを支えて、自分の可能性を広げていける環境が今日花開きました。
 試合は一回戦から間合いでの積極的な攻めと抜きを使い、相手に主導権を渡さず、有効なタイミングで飛び込み小手、意表を突く飛び込み面、接近戦からの上げ小手など、流れるように技がつながり、試合を観戦していた者として、感動を覚えました。勝てない苦労と悔しさを目の当たりにして、それでも自分の可能性を信じて稽古している姿に、もし剣道の神様がいるのなら、この子にいいことが起こらないはずがないと思えるほど頑張っていました。結果が出ない、レギュラーから外される、悔しい思いが、今日結果として出ましたね。2回戦、3回戦も見事でした。負けた試合も、強豪道場の選手に時間いっぱいの展開でした。むしろ小手技を3本外したことが敗因です。あの試合も勝っていますよ。
 このまま、自分の剣道を求めて修行してください。あと、樫の木刀は今日の勝利記念にあげます。体がまだできていませんから、軽い木刀で刀筋を整えて素振りしてください。手首を痛めないようにしてください。

 中学生は女子2名の参加です。

 Tさんは、攻めのタイミングがつかめず、出遅れて相手の打ちに合わしてしまい、負けることが課題となっています。様々な稽古をしながら改善に努めましたが、いまだしっくりときません。それでも、打突の迫力と一本に対する気持ちが出せるようになっていますので、この試合で何か掴めると良いと思います。
 試合は相手の抜き胴に対して、一本を先行されるも、積極的に小手を取りに出ます。3本ほど当てているのですが、審判が全く反応しません。裏の飛び込み面も捉えているのですが、これも全く反応がありません。試合も時間切れで、不完全燃焼の敗退となりました。
 試合後、本人も納得がいかない様子です。いったいなぜ一本が認定されなかったのでしょうか?ここを宿題としなければ、今日の敗戦は感情論になってしまいます。私は考えました。なぜ今回の打突が一本にならなかったのか。まずは声の質です。今回の試合会場は東京武道館で空間も広いため声が反響しません。そのため、打突に対して声のきめが悪かったように感じました。同じ会場の一本になった場面を見ていると打突はそんなではないものの、声と残心で一本にもっていく選手を多く見ました。
 審判の癖が、機会の捉え方と気合と残心で多く旗を上げている印象でした。特に課題としては、打突後のキメと離脱のスピード感のなさです。ここら辺のことは、感覚的なものとなってきますので、地道な稽古が必要です。当てていないのではないので、打突のクオリティーをあげることが必要ではないかと考えます。
 上位に進出した選手の打突と、自分の打突に遜色はないように感じました。そうなると、勝ち負けの決する要因は、間合いとタイミングということになります。

 Nさんは剣道を始めて1年ちょっと、面をつけて稽古しても、まだ1年ぐらい、それでもコッコツと稽古して、今日この舞台に臨みます。相手は見るからに強豪な選手です。たたずまいに雰囲気があります。しかし、やってみなければわからないもの、前半はパワーに押されるものの、タイミングよく技を出して反撃します。中盤に瞬間的に出た小手技が当たりますが、今までの経験から瞬間に出る無心の技に対応ができません。声も残心もなく打突音だけが響きました。その後は徐々に相手の実力に押されての二本負けとなりました。
 今までは、経験者に対抗するため、ある程度自分のパターンに当てはめて、狙って打っていたと思います。今日はその中で「無心の技」が出たと思います。あれがまぐれなのか、ZONEに入って出た技か、今後の稽古で問われます。進歩を体感した敗戦であったと思います。

 本日は、台風が接近している中、西のはずれ八王子市から東の東京武道館まで朝早くから移動し、お疲れさまでした。今日の戦いは要成館にとって、意地の戦いとなったようです。
 全国を逃し、結果が出ない中で、やはり週一稽古では、さすがに無理かと思われるところ、今日の子供たちの躍動する姿を見て、自分たちがしているチャレンジは間違っていないんだと確信を持てる結果となりました。たとえ1回戦で負けていても、次の課題を持って帰り、その日に自主練に参加して稽古している子供もおり、求める稽古の大切さを子供たちに教えてもらいました。

 子供たちを支えている保護者の皆さん、今日の試合の素晴らしさを共有できて、本当に感謝いたします。

 さあ、明日からまた稽古しますか!


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