第75回市民スポーツ剣道大会R3.10.10  

前日の雨から,コロナが終息に向かい,大会開催を祝福するように晴れ晴れとした天気の中,2019年度の台風被害以来の八王子市民スポーツ大会が開催されました。

 さて,今回の市民大会は,2年間の空白の時間を経て開催されました。2019年度は台風,2020年度はコロナ感染症の影響で大会が中止となり,引退試合もできずに卒団をしていった道場生の無念さを思うとやっと大会が開かれるようになったのだと感慨深いものがあります。現道場生も試合経験のない者が多く,今回の市民大会がデビュー戦となる道場生がどのような試合をするのか注目が集まります。

 小学生の部は小学12年生の部から6年生の部までの5部門に分かれて開始されます。今回の注目は小学12年生の部に出場する2名です。普段の稽古では週1回ながら,すでに一拍子の面や返し技などの稽古をして手ごたえをつかんでおり,指導している側としては,誰かは入賞するであろうと勝手に期待していました。

 Tさんは1回戦シードで一つ勝てば3位以上が確定する状況ですが,同じ山に強い子が2名おり,その強い子同士の勝者との戦いという厳しい勝負となりました。中盤までは互角というよりはやや押し気味に試合を進め,いつ一本を取るのかとドキドキして観戦していました。返し面や追い込み面に惜しい技があったものの,しっかりとした当たりができず旗が上がりません。最後はお互いが全力の試合内容でしたが,惜しくも勝つことができませんでした。錬成大会で見せた出鼻面が出れば勝負は違ったかもしれませんが,この負けを新たな課題としてほしいと思います。

 K君は元気一番の道場生,上手にできないときには涙を見せる負けず嫌いな一面と誰よりも声を出し積極的に稽古する姿に好感が持てる選手です。
 得意の飛び込み胴も今回は相手も胴と相打ちとなり相性が良くない様子,気合の飛び込み面も緊張のせいかキレがなく悔しい負けとなりました。初陣を勝利で飾れず,稽古でできたことが上手く出来なかったことを自覚している様子でした。やるべきことがわかって反省し,次につなげる姿勢に,次回の試合での一本を期待します。

 1・2年生の部はどちらかが入賞するのではないかと考えていましたが,勝負の神様は簡単には勝たせてくれないようです。しかし,2名にとっては次に宿題をいただいた貴重な試合経験となったようです。 次はもっと良い試合ができるでしょう。

 3年生の部にはエントリーなし。 

 4年生の部には4名の選手が参加しています。

 S君は課題の多い選手です。特に「手の内」,打突後の送り足からの残心まで課題を持っており,この試合でもこの課題がでていました。追い込みの面や引き面に惜しい当たりがあるものの,空振りをすると床までたたいてしまいそうな振りや,当たってもその場で止まってしまう余勢がない打ちが目立ちます。相手も同じくらいのレベルの選手で,試合は延長となり,最後は抜き面での一本を取り接戦を制しました。練習でできないことは試合ではできません。基本の打突をもう一度取り組んでほしいと思います。また,声も出ない内容に本人が今後の稽古でどのように変わるのか見てみたいと思います。
 しかし,初めての一本奪取,初めての勝利は本人にとっては何よりの自信となることでしょう。どんな勝ち方でも,今日の勝ちという事実が今後の自分の剣道の新たなるスタートとなってくれればと思います。

 K君はまだ剣道を始めて,やっと防具をつけて対人稽古を始めた選手です。本来ならもう少し経験を積ませてから試合に臨ませたいところです。普段の稽古では目に見えて上達している選手です。出鼻面,返し面に返し胴と基本打ちはできるレベルなので,試合に出るには問題ないと判断しての今回初試合です。課題である踏み込みに力がないものの,良く相手を見てしっかりと試合を展開します。あがってしまって試合にならないかとも思っていましたが,しっかりと試合を構成していました。課題は強い踏み込みと自分からの技となると思います。負けはしたものの,落ち着いた剣道をしており,試合という経験を通して,次につながる負け試合となったようです。

 T君は一本集中で,稽古も手を抜かず真面目にコツコツとこなしている選手です。身体は小さいですが,しっかりとした一拍子の飛び込み面に期待が高まります。しかし,試合では,まだ機会をとらえることができません。良い振りですがしっかりと防御されてしまいます。打突の機会の作り方が今後の課題となります。当たり前ですが,稽古において,自分の力で一本をとる成功例を積み上げていかなければ試合では通用しないと思います。来年の試合では,きっと一本をとれる剣道になっています。このまま頑張って稽古しましょう。剣風は誰よりもかっこよいです。

 N君は道場連盟の錬成大会個人戦で敢闘賞(東京都ベスト8)の選手です。当然八王子では優勝狙い。試合前にも「優勝以外認めないぞ。」という館長の愛ある言葉に,ますます自分にプレッシャーをかけます。試合全体を見ても捌きや打突の切れ,手数や気合等,体は小さくても,その存在感はエースの貫禄です。延長の試合もあり,接戦のように見えますが,しっかりと負けない剣道を実践して確実に勝ち上がります。全試合において,危ない場面はほとんどない印象でした。

 今回は体の大きなパワー剣道をする対戦相手がいませんでした。今まで負けた相手は,自分より大きなパワー剣道の選手でした。今後の課題はこの対応となってくると思います。

 来年,再来年と八王子では連覇をして,次の目標として東京都少年剣道錬成大会での個人3位以上の入賞を目指してほしいと思います。

 5年生の部ではHさんが初出場しました。まだ剣道を初めたばかりで,コロナの影響で稽古も進まず,ぎりぎりまで出場の判断が迷うところでした。しかし,試合経験をすることを目的に,今回出場をしました。当然勝ち負けは重要ではないものの,自分から一本打って出れるかが課題となります。対戦相手は結果として3位入賞した強い相手との試合になってしまい,自分の打ちができなかったようですが,相手のスピードやパワーに,打たれて納得の経験だったようです。相手のスピードがすごかったと感想を述べていましたが,徐々にそれも普通のこととなってきます。まずは速く・強く・正しく打突することを身につけましょう
 今回,しっかり稽古して試合に出てくる選手の打突を体感し,貴重な経験となったようです。まずは一本を取れるように,打突の数をあげるような稽古をしていきましょう。

 6年生の部には5名が出場しました。

 KK君はまずは一本を取ることが課題の選手です。普段の稽古での出席率や不器用ながらも一生懸命取り組む姿に,何とか一本を取らせてあげたと思わせる選手です。この試合でも実直に飛び込み面を打ち続けますが,届かない間合いからの打突と空振りや,間合いの中で止まってしまい,残心まで持っていけない状態での打突が続きます。今回も残念ながら一本に結び付きませんでしたが,決して落ち込む内容ではありません。稽古で見せた一本を試合で出せるようにこのまま続けてください。

 YK君は身長も高く,八王子の代表に選ばれるほどのセンスが光る選手です。現在,稽古が継続的に強化できない中,それでもやれることをしっかり実践してきた選手です。
 1回戦・2回戦と自分らしく淡々と勝ち上がり,3回戦に臨みます。3回戦は体も大きいスピードもパワーも備えた選手との対戦となります。それまで返し面で自分の流れを作っていた試合運びが,この相手にも通ずるのかがポイントになりました。
 開始早々からスピード感ある相手に攻め込まれてしまい,自分のリズムがつかめません,相手のスピード感ある打突に飲み込まれてしまいました。圧力の強い相手に勝つという課題が見えた一戦でした。主導権を自分の打突ミスで一本を逃し取り損ねてしまいました。上に上がれば上がるほどチャンスは少なくなります。その一本を決めきるように日々の一本を大切にしてください。

 Tさんは要成館を代表する選手です。八王子代表や都道府県大会,錬成大会においてもその存在感は別格です。しかし大会前から剣道に迷いがあり,自信が持てない中での試合となってしまいました。相打ち面での打ち合いとなり,先をかけられて,打ちが一歩遅れての打突となってしまい二本負けという結果に,自分から攻めての打突に課題が残る悔しい負けとなりました。本来の攻撃的な剣風に戻して,調子を取り戻そうと思います。

 Iさんは最近やっと剣道が楽しくなってきた選手です。その結果,稽古も積極性が出てきて,今伸び盛りの注目株です。出鼻面に自信を持ち,この試合でも捨てた面が出るのかが勝負の分かれ目でした。しかし,試合経験の浅さからか,お互いににらめっこで打突機会が作れず長時間の延長戦となりました。延長戦も打ちあうことがほとんどなく,時間だけが淡々と過ぎていきます。勝っても負けてもあまり内容のない試合といった印象で,自分から勇気を出して攻めていくことが課題となる試合でした。

 RK君は,体は小さく気魄もあまり外には出ませんが,錬成大会でも飄々と勝ち進む実力のある選手です。市民大会では3位以上が期待されていました。出る技・引く技・返す技とオールラウンドプレーヤーであり,守りも固く引き分けのない個人戦での勝負では力を発揮します。延長戦となる試合もありましたが,持ち味である粘り強い戦い方で相手の間合いに深入りしません。出るとこは出て,守るところは守るといった試合運びで勝ち上がります。
 準決勝の相手はYK君を倒して勝ち上がってきたパワーのある選手です。身体は小さいですが,間合いの上手さで相手にぶつからずパワー剣道をさせません。素早く相手の懐に入り小手,無理して出てくるところに返し面と試合を有利に進めて危なげなく二本勝ちします。K君の真骨頂と言ったところでしょうか。いとも簡単に強敵を退けます。

 決勝の相手も気の抜けない相手でしたが,これも持ち味である淡々とした間合い運びで相手を制し,殊勲の優勝となりました。優勝しても表情に現れず飄々とした様子に底知れぬ才能を感じました。

 中学生の部では男子2名及び女子1名の登録です。

 女子のHさんはこれが引退試合です。ツボにはまればなかなか強い剣道をしますが,何せ現役を引退した3年生の選手で,稽古も足りません。それでも自分の剣道をしっかりと出して,中学の剣道生活にピリオドをうちました。高校でも剣道をするのか迷っているようですが,基礎はしっかりとできていますので,試合経験が積みあがればもっと勝てると思います。頑張ってください。

 男子F君は,試合に対してまだ対応ができていない印象です。身体も大きくなり力も強く,手足も長く身体的なスキルは高いと思います。技術的な面では,打突が大きく,左足を継いでしまうので,一拍子で打突できないことがこれからの課題となります。また,打突前の攻めや崩しがないため,打突の間が単調となり,相手にプレッシャーがかからずに防御が簡単になってしまいます。中学での実践稽古を考えて,スピード感のある攻めや崩しを研究してみてください。

 I君は少し打突に癖があり,結果的にそれが勝っていく要因につながっているようです。しかし,右ひじを伸ばしての中段の姿勢や右手首を捻っての打突など,基礎から離れてしまって,剣道の質が落ちているような印象を持ちます。先に当てれば勝ちといった内容の試合ではなく,格好の良さも争ってほしいと思います。その打突が格好いいのか,再度自分で考えてみてください。

 その他,中学の剣道部からの出場で,要成館所属の男子3名が出場しました。

 RK君は,動きは悪くないものの右手で竹刀を振りかぶる癖が出て打突の質が悪くなっていました。中学に上がり結果が出にくくなっています。理由の一つに,この振りかぶりの質の問題があるのではと思います。また,先に乗る状況が作れていないので,打つ前の作りを考えてみる必要があります。中学剣道のレベルにバージョンアップする必要を感じました。

 M君は,そろそろ結果が欲しいところです。稽古ではやっと一本取れる自信がついたと思いますが,まだ実戦での成功例がありません。この試合でも稽古で出ていた伸びやかな面は出ませんでした。試合と稽古が同じようにできるように稽古してください。稽古ではよい打突ができています。あとは経験と成功例といったことが自信となります。

 K君は,前回の錬成大会できっかけをつかんだような感じがします。自分の剣道のイメージと体の運用がシンクロしだしているようです。課題を持った良い稽古を最近はしています。
 今回も落ち着いて試合を運び,格上の相手にも堂々と対戦します。特に準決勝では,苦手にしていた大きな相手に対して,負けたとはいえ,自分らしい剣道を出し切り3位となりました。初めての個人タイトルをとることができましたが,先に返し胴は取っていたのに抜ききれなかったのが敗因と考えられます。結果,主導権を取れずに試合が進んでしまいました。もしあの胴が一本になっていたら優勝者は自分であったかもしれません。チャンスを確実にものにする厳しさが求められるレベルに達したといえます。さらに高みを目指してください。

  2021年度の市民大会は,優勝者が2名,3位が1名といった結果でした。ベスト8にも2名と,入賞まであと一歩の選手も多く,結果が出た大会といえます。一方で,個別に試合を見ると,一本を取ることを課題とした選手や,初試合の選手に結果が出なかった大会であったとも感じています。

 勝てば選手の手柄,負ければ指導者が悪いと,常日頃思って指導にあったてきました。結果が出なかった選手には次の稽古で新たな課題をもって稽古してもらおうと思います。

 すでに2021年度の残りの大会は,西東京の剣道大会と女子の毎日レディースの2試合です。その他は決まっていません。気が付けば6年生が出られる試合もわずかです。中学校に上がり新しい環境で剣道部に所属する道場生の数は少ないと思います。3月には一級審査会もあります。残りの剣道修行を最後までやりきって新たなステージに行ってください。

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